新型コロナウイルスの影響により、ビジネス現場における
取引書類の電子化が大きく浸透した2020年
〜2021年は、会計・税務等の法的要件充足を条件に、法令対応と内部統制を前提とした電子化がテーマに!「2020年ペーパーレス化考察と2021年予想」を発表〜
- 2020年のペーパーレス化について
新型コロナウイルスで加速したペーパーレス化意識の高まりと見えてきた課題
2020年は新型コロナウイルスにより、企業は大きな変化や対応を求められました。その象徴となったのがテレワークの導入です。一方で、ハンコと紙を多用してきたワークスタイルがテレワークの足かせになることがわかりました。これにより、各種法的文書の電子化の流れが高まるなど、急激にペーパーレス化が進んでいます。
例えば、2020年3月ごろには請求書の電子化に焦点があたりました。その結果、請求書をはじめとした契約書などの社外文書も一気に電子化が進んでいます。物理的に距離が離れているテレワークでは、電子化されていないと業務のスピードが著しく落ちるという実務上の問題が明らかとなりました。
また、当社が2020年10月14日に発表した企業の角印利用実態に関する調査(https://paperlogic.co.jp/news_20201014_2/)では、電子発行されていない取引書類について「電子発行へ変えたいと思う」人は71.7%(n=53)にのぼるなど、社会全体として電子化への意識が高まった一年であったと言えるでしょう。
2020年11月17日に発表した申込書の電子化に関する調査(https://paperlogic.co.jp/news_20201117/)では、顧客からの申込書について電子化を強く望む会社員は90.0%(n=110)など、取引書類に関する電子化の需要も高まっています。
しかし、電子化を行なったとしても法的要件を満たさなければ、倉庫などバックヤードに紙を保存しなければいけません。市場で提供されている電子化サービスを活用しても、会計監査や税務での書類保存要件などから「電子化 ≠ ペーパーレス化」とはなっていない現実があります。紙書類がなくなってこそ電子化のメリットが活きてくることから、ペーパーレス化いまだ道半ばというのが実態ではないでしょうか。
例えば、取引書類では税務・会計要件も丁寧にみる必要があります。取引書類の電子化・ペーパーレス化では、決裁・承認時のなりすまし・改ざん防止の他に、長期間の法定保存に耐え得る仕組みが必要です。税務においては、書類(例えば添付領収書など)を確認したい時すぐに改ざん検知ができる(すり替えや修正などがないことの確認)システムがないと、電子保存が認められません。
特に上場企業や上場を目指す企業においては、ただの「書類のデジタル化」にとどまらず、「業務プロセスのデジタル化」ならびに「ガバナンス・内部統制のデジタル化」を同時に進めていくことが重要になってくるでしょう。
会計監査を受ける企業においては、内部統制の整備・運用は重要です。取引情報が適切に作成され、授受・承認・保管されているかということを記録し、検証できるようにする必要があります。契約締結行為であれば「本当に契約当事者が承認しているのか」ということが記録として残り、確認できるか、業務プロセスの真正性の担保が求められます。電子商取引が拡がる中、2021年において更に内部統制の整備・運用は電子化の課題となるでしょう。
- 2021年の展望
電子商取引が一層普及、法律法令対応を前提とした電子化を進めていくことが必要
書類電子化が当たり前となる今後においては、企業は経営スピードの向上や管理部門の効率化が必要となり、紙の書類から脱却してデジタル化を進める必要性に直面します。これにともない、内部統制やガバナンスも、高いセキュリティを前提としたデジタル化が主流となってくるでしょう。
書類や業務プロセスを法律法令に準拠して電子化を行なっていないと、結果的に電子化をしても紙の保存をしなければならないなど、二度手間が発生します。自社にとって電子化をして何を実現したいのか、そのためにどのような法的要件を満たす必要があるのかを認識したうえで、それらに応じた電子化を進めていくことが重要です。
電子契約について会計監査上重要なポイントは「本人性」、「改ざん余地の排除」です。取引両当事者の本人性確認は、当該取引の重要性に応じてPKI基盤電子証明書を活用する、また、請求書などの取引書類であれば来年度以降法制度化が検討されている「日本版eシール(企業証明)」を活用するなど、書類の重要度により「強弱をつけた」デジタル化が求められます。
セキュリティを高めた電子化を進める理由の一つとして、電子契約の仕組みを利用した不正取引が出始めていることがあげられます。紙とハンコの場合、不正のハードルは一定の高さがありますが、デジタルでは手元のスマホで架空の契約データを作成、架空のメールアドレスで電子契約を締結することなども可能となります。対策としては、本人確認を経たPKI基盤電子証明書を伴う電子契約システムを利用することなどが考えられます。
2020年に進んだ電子化ですが、2021年は、法律法令への対応を念頭に置いたシステム・サービスの取捨選択を行なう必要があるでしょう。